研究 (Research)

最終更新日:

セラミックス粒子添加による鉛フリーはんだ合金強化手法の開発 (Lead-free solders reinforced with ceramic particles)

教授 西川 宏(接合科学研究所) NISHIKAWA Hiroshi (Joining and Welding Research Institute)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 接合科学研究所 (Joining and Welding Research Institute)

English Information

研究の概要

本研究は、鉛フリーはんだ合金の高強度化・高延性化を可能にする手法開発と信頼性に優れたはんだ接合部を得ることを目的としている。はんだ合金の強度と延性を両立させるために複数のセラミックス粒子を添加する新たなコンセプトと独自の実現手法を提案し、実際に実験、評価している。
特に、セラミック粒子に対する新たな表面改質手法としてボールミリング – 熱分解法を研究するとともに、Sn-Ag-Cu 系はんだ合金を例に取り、複合添加はんだ合金の作製からはんだ合金の機械的特性、セラミック粒子 / はんだ合金界面、はんだ接合部の信頼性に至るまでを系統的に分析評価している。

研究の背景と結果

モビリティ分野やヘルスケア分野など様々な新規分野へのエレクトロニクス製品の広がりにより、電子基板上のはんだ付部に対して、これまでに以上に優れた特性や信頼性が求められている。そこで、鉛フリーはんだ合金の機械的特性と信頼性向上を目的として、強度と延性を両立させるための複数セラミックス粒子を添加する新たなコンセプトとその実現手法を提案するとともに、実際にセラミック粒子複合添加はんだ合金を試作し、はんだ合金の機械的特性、セラミック粒子 / はんだ合金界面などを評価した。得られた結果を以下に具体的に説明する。
 1.セラミックス粒子の新しい表面改質法としてボールミリング – 熱分解法を提案し、ナノサイズのセラミックス粒子とマイクロサイズの異形セラミックス粒子へのニッケル酸化物の形成機構解明と付着制御を行ない、セラミックス粒子表面の改質に成功した。更に、透過型電子顕微鏡を用い、セラミック表面とニッケル酸化物界面の微細組織構造を明確にした。
 2.ニッケル酸化物を被覆した2種類のセラミックス粒子を Sn-1.0Ag-0.5Cu はんだ合金に添加し、超音波攪拌を利用して分散させたセラミック粒子複合添加はんだ合金を作製した。走査型電子顕微鏡による観察の結果、合金そのものの微細構造へのセラミックス粒子添加の影響や Sn/NiO/ セラミックス界面構造を明確にした。また熱分析の結果、セラミック粒子添加はんだ合金の融点に大きな影響を与えないことを確認した。
 3.セラミック粒子複合添加はんだ合金の引張試験により合金の機械的特性を評価したところ、引張強さが35.9 MPa、伸びは31.4%となり、低銀含有量のはんだ合金でありながら、広く汎用的に用いられているSn-3.0Ag-0.5Cu はんだ合金よりも優れた特性を示すことが明らかとなった。

以上のように本研究は、はんだ合金強化手法の新たなコンセプトを提案し、その強化機構を詳細に明らかにしたものである。このことは、提案されたはんだ合金の有用性を示すとともに、新たな材料強化手法としての発展が期待できる重要な知見を与えるものであり、今後のはんだ合金材料の発展が期待できる成果である。

研究の意義と将来展望

優れた特性と高い信頼性を有するはんだ合金やはんだ付部を確立する一つの手法として、非反応型のセラミック粒子をはんだ合金に添加する新たな手法を提案している。特に、はんだ合金へのセラミック粒子添加で問題となる分散性の向上を目的としたセラミック粒子表面改質手法の研究に取り組むことで、理想的なセラミック粒子複合添加はんだ合金の実現を可能にする。
本研究で得られた知見は、Sn-Ag-Cu 系はんだ合金に限らず低融点の Sn-Bi 系はんだ合金など各種鉛フリーはんだ合金の特性と信頼性向上に適用可能であり、益々の特性改善や信頼性向上が期待される鉛フリーはんだ合金やはんだ付部の構築に広く貢献が期待できる。

担当研究者

教授 西川 宏(接合科学研究所)

キーワード

鉛フリーはんだ合金/セラミックス粒子表面改質/機械的特性改善

応用分野

電子機器/自動車/航空宇宙

参考URL

http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~dpt3/index.html
https://researchmap.jp/read0191232

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2024(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。