研究 (Research)
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イノベーションを促進する組織・制度の設計
石田 潤一郎(社会経済研究所)
取組要旨
物的・人的資本の蓄積が臨界点に達する成熟した社会では,継続的なイノベーションが唯一の持続可能な経済成長の源泉となる.本研究では,イノベーション創出において重要なカギとなる,新しい「知識の探索」(exploration)と既存の「知識の活用」(exploitation)のトレードオフに着目し,どのような組織構造の下で,最適な知識の探索と活用のバランスが実現されるのか理論的に分析し,さらにそこで得られた含意を経済実験によって検証する.具体的には,組織における権限配分の構造(どの程度権限をリーダーに集約するか)と報酬体系(研究開発の結果に応じた報酬格差をどの程度大きくするか)がイノベーション創出の効率性に与える影響について分析を行う.また,こうした形式的な制度・契約で制御できる側面だけでなく,リーダーの決断力やリーダーに対する信頼感といった個人属性が与える影響についても考慮し,イノベーションの制度的側面と属人的側面の相互依存関係についても明らかにしていく.
研究成果・インパクト
産業界における技術革新は,大まかに,既存の生産工程の改良(プロセス・イノベーション)と新しい製品カテゴリーの創出(プロダクト・イノベーション)の二つに分けることができる.日本企業は特に前者のプロセス・イノベーションに優位性を持つが,こうしたイノベーションの結果は,組織内における知識の探索と活用のバランス関係によって決定される.しかし,プロセス・イノベーションの価値には必ず上限が存在するため,持続可能な経済成長を達成するためには,知識の探索を軸としたプロダクト・イノベーションへの比重を高めていく必要が生じる.本研究で得られた知見によって,日本企業がプロセス・イノベーションに傾倒してしまう要因を特定し,プロダクト・イノベーションを促進するための制度の設計に体系的に取り組むことが可能になると期待する.
担当研究者
石田潤一郎(社会経済研究所)
キーワード
知識の探索・活用,制度設計
応用分野
経済学