研究 (Research)

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マイノリティ教育ラボ「夜間中学校プロジェクト」

岡部 美香・榎井 縁(人間科学研究科)、今井 貴代子(SSI)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 人間科学研究科・人間科学部 (Graduate School of Human Sciences, School of Human Sciences)

取組要旨

大阪大学・人間科学研究科附属未来共創センターに設置されたオープンプロジェクト「マイノリティ教育ラボ」では、2020年8月から「夜間中学校プロジェクト」を展開している。夜間中学校は、「教育機会確保法」の成立(2016年)以来、日本で暮らすすべての人々に義務教育および普通教育を保障するための教育機関の一つとして注目されつつある。他方で同時に、これまで戦争や貧困等による不就学やオールドカマーに対する教育(自己肯定感や生きる充実感を高めるための識字教育や歴史教育)に従事し、豊かな実践的ノウハウと経験を蓄積してきた夜間中学校は、近年増加しているニューカマーや不登校生徒への対応、そして今日のコロナ禍による経済・教育格差の拡大という新たな社会的課題への対応を迫られている。そこで本プロジェクトでは、①夜間中学校のこれまでの教育プログラムに関する記録と記憶を保存し、今日、新たな形で困難を抱える諸教育機関において発展的に継承できるようにすること、②夜間中学校の今日的な課題と新たなニーズを明確にし、それらに対応できるシステムやプログラムを提言・提案すること、③コロナ禍の教育格差を緩和・解消すべく、ICT教育の導入等を支援すること、の3つを目的として、大阪府教育委員会および府下の関係市町村教育委員会の協力を得ながら、調査研究を実施する。

研究成果・インパクト

公立夜間中学校は2022年4月現在、15都府県に40校設置されており、文部科学省は今後、各都道府県に最低1校の設置をめざしている。40校のうち11校を擁する大阪府で蓄積されてきた教育実践ノウハウと経験を、これから設立される他都道府県の夜間中学校の運営および実践に生かすことができる。これにより、国籍を問わず、日本で暮らすすべての人々に義務教育・普通教育を保障する土台を形成することが可能となる。また、夜間中学校は、社会のなかで周縁化された人々が多く通うが、彼(女)らが質の高い義務教育・普通教育を受けて人権意識・権利意識を高めるならば、彼(女)ら自身も含めて、人々が主体的に貧困などの社会問題の解決・解消に取り組むとともに、不平等のない公正な社会を構築するのを支援・促進することも可能となる。

担当研究者

岡部美香・榎井縁(人間科学研究科)、今井貴代子(SSI)

キーワード

夜間中学校、マイノリティの教育・学習支援、戦争等による不就学、オールドカマー、ニューカマー、障がい児・者、不登校、貧困、すべての人々に対する義務教育・普通教育の保障

応用分野

学校教育、社会教育、生涯学習